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予防接種

予防接種とは

感染症の原因となる特定の細菌やウイルスを無毒化したワクチンや、病原性を弱めたワクチンを接種することによって、その感染症に対する抗体が作られ免疫の記憶に残り、次にその病原体が体内に入ってきた際に抗体が攻撃し、その感染症の発症や重症化を防ぐ効果が期待できます。このようにワクチンを接種することを予防接種といいます。
ワクチンで予防できる病気をVPD (Vaccine Preventable Diseases)と言い、現在、20種類以上あります。
接種を受けた個人の感染・重症化リスクを最小限に抑える効果に加え(個人防衛)、接種を受ける人が増えることで社会全体の感染リスクも抑制されて集団感染を予防する効果にもつながり、感染症の流行を防ぐという公衆衛生の面からも高い有効性があります(社会防衛)。

定期接種と任意接種

子どもの予防接種には、定期接種と任意接種があります。
定期接種は、「予防接種法」(予防接種の規則を決めた法律)に書かれているワクチンのことで、原則、国が推奨している期間に接種することで費用は地方自治体から支払われ(公費負担)、無料で接種が可能です。感染力が高く、命に関わるような深刻な症状を起こす感染症のうち、国内でよく見られる病気が対象となり、定期接種による集団感染のリスク低下も期待されています。国が推奨している期間を過ぎてしまうと任意接種扱いとなり全額自己負担となります。自治体によっては、公費接種期間に海外在住していたが帰国した、などの事情のある方に対して、公費接種ができるように予診票が配布されることもあります。管轄の役所や保健所へご確認ください。

任意接種は、国が接種を認めているものの、「予防接種法」で規定されていないワクチンのことです(A型肝炎、髄膜炎菌、23価肺炎球菌多糖体、黄熱、狂犬病、破傷風トキソイド、おたふく、インフルエンザ、新型コロナ)。接種に必要な費用は、原則、個人が負担します。一部の地方自治体では、その費用を一部、または全額負担してくれるところもあります。
任意接種の中には、欧米諸国では定期接種になっているものが含まれ、今後本邦でも定期接種化が検討されているものもあります。おたふく、インフルエンザ、新型コロナは、日本小児科学会が推奨する任意接種です。

不活化ワクチンと生ワクチン

一般的なワクチンは不活化ワクチンと生ワクチンに分けられます。
不活化ワクチンは、感染症の原因である細菌やウイルスを死滅させた上で毒性や増殖性を失わせ、免疫を得るために必要な部分だけになったワクチンです。予防に役立つ免疫力を得るために複数回の接種を行いますが、ワクチンによって必要な摂取回数やタイミングが変わります。代表的な不活化ワクチンには、小児用肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、3種・4種・5種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、ヒブワクチン、季節性インフルエンザワクチンなどがあります。
生ワクチンは、生きた細菌やウイルスを弱毒化させて作られており、接種で弱い感染を起こし、それによって免疫を獲得します。不活化ワクチンよりも必要な接種回数が少ない傾向があります。生ワクチンには、経口生ワクチンのロタウイルスワクチン、注射生ワクチンの水痘ワクチン、麻しん・風しん混合ワクチン、BCGワクチン、おたふくかぜワクチンなどがあります。

ワクチンデビューは生後2ヶ月

ワクチンデビューは生後2ヶ月赤ちゃんは、生後5〜6ヶ月までは、お母さんから引き継いだ免疫などによって、多くの細菌やウィルスなどの感染から守られていますが、その免疫が落ち始めると、入ってきた病原体に対する免疫を自分で作っていかなくてはなりません。自然に免疫が強化されるまでは長い時間がかかり、それまでは様々な感染症にかかるリスクや重症化リスクが高い状態が続きますので、5〜6か月までに十分な効果を発揮させるためには、生後2か月になったらすぐに予防接種を開始することが大切です。

同時接種

子どもが受けるワクチンの種類は多く、複数回の接種が必要なものや受ける期間が決まっているものもあります。風邪などでタイミングがずれてしまい、スケジュールを立て直す必要が生じることもあります。必要なワクチンを効率的に、かつ安全に接種する方法として「同時接種」があります。
同時接種は、昔から行われている海外の国々でも安全であることが確認されています。さらに、1回に接種できる本数に原則、制限がないこともわかっています。ワクチン接種後の副反応は、一定の割合で起こりますが、同時接種によってその割合が増える訳ではありません。効果について、複数のワクチンを接種してもその効果が落ちたり、強くなることはありません。
同時接種は、左右の上腕(ひじより上)、左右の大腿(太もも)に別々の場所に行います。
たくさんのワクチンを安全に確実に接種するために、しっかりとスケジュールを立てるようにしましょう。個々のスケジュールについて、ご案内させていただきますので、お気軽にご相談下さい。どうしても同時接種したくない場合は、スケジュールを一緒に考えますので、お声がけください。

ワクチンの副反応・有害事象

ワクチンの接種によって体に免疫反応が起こり、それによって感染症の発生を防ぐ免疫ができることが「主反応」です。それに対して、免疫ができる以外の反応(発熱、注射部位の発赤・腫脹、重症のものとして脳炎・脳症など)が発生することを「副反応」と呼びます。
一方、接種後に、たまたま何かの原因によってある事象が起こるとき、実際には原因がわからないことも多く、それらをまとめて「有害事象」と呼びます。その中には「副反応の疑い」が含まれます。
生ワクチンでは、接種後にワクチンの対象とする感染症の症状が一定の期間(1~2週間)をおいて弱く出ることがありますが、これは不活化ワクチンでは起きません。
生・不活化の両方に共通して、軽い副反応として、局所反応(発赤・腫脹・疼痛など)やアレルギー反応、発熱、発疹が起こります。重いものとしては、アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)、急性脳炎、けいれん、急性散在性脳脊髄炎、ギランバレー症候群などが稀に起こります。医師によって届出があった重篤な副反応は約10万接種に1回くらいの頻度とされています。

当院のワクチン接種について

当院では、お子様のストレスを最小限に抑えるため、原則としてお母さんに抱っこされた状態で接種を行っています。さらに、注射しない方の手を握っていただいたり、接種部位を予め保冷剤で冷やすなどの工夫を行うことで、痛みを緩和させています。ご本人の安心のために、お気に入りのおもちゃをご持参いただくのも良いです。
特別な事情がなければ、言葉がわかるお子様には、ぜひきちんと「大事なことだから頑張ろうね」と伝えましょう。また、「痛くないよ」は嘘になってしまい、周囲の大人に対する不信感や次回以降のお子様への負担に繋がりかねないので、注意しましょう。
当院では、一般診療時間にも予防接種・乳幼児健診を受けて頂けるほか、予防接種・乳幼児健診優先の時間を設けております。ご家族様のライフスタイルに合わせながら、より安心して予防接種を受けて頂けるように心がけてまいります。

接種間隔

「注射生ワクチン」は接種後27日以上の間隔が必要です。注射生ワクチン以外の予防接種の場合、前回のワクチン接種からの期間に関係なく、異なる種類のワクチン接種が可能です。
ただし、同じ種類のワクチン接種を複数回受ける場合は、ワクチンごとに決まった間隔を空ける必要があります。

予防接種の種類・回数・推奨年齢

定期接種

B型肝炎ワクチン

<目的>B型肝炎ウィルス持続感染(キャリア)による発癌リスクの予防(肝硬変〜肝細胞癌へ進行)

  • 推奨接種回数:3回
  • 定期接種可能期間:生直後〜1歳未満
  • 標準的接種年齢:生後2か月、生後3ヶ月、生後7~8ヶ月
    ※母子感染予防の場合は生直後、1か月、6か月

ロタウイルスワクチン(1価または5価)

<目的>ロタウィルス感染による嘔吐下痢症、合併症・脱水の予防(世界では毎年50万人の乳幼児が死亡)

  • 推奨接種回数:【1価】2回  【5価】3回
  • 定期接種可能期間:生後6週から
    【1価】生後24週まで 
    【5価】生後32週まで
  • 標準的接種年齢:初回接種は生後8-15週未満
    【1価】生後2か月、生後3か月
    【5価】生後2か月、生後3か月、生後4か月

小児用肺炎球菌ワクチン(PCV)

<目的>肺炎球菌の感染および化膿性髄膜炎、敗血症、肺炎などの重篤な合併症の予防(50-60%に減少)

  • 推奨接種回数:4回
  • 定期接種可能期間:2か月〜5歳の誕生日前
  • 標準的接種年齢:生後2か月、生後3か月、生後4か月、生後12-15か月

5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib:ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・ヒブ)

<目的>ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ及びヒブ(インフルエンザ菌b型)感染およびそれによる合併症の予防

  • 推奨接種回数:4回
  • 定期接種期間:生後2ヶ月~7歳6か月の誕生日前まで
  • 標準接種時期:2か月、3か月、4か月、1歳〜2歳の誕生日前

ヒブワクチン(2024年4月より5種混合に変更)

<目的>ヒブ感染および化膿性髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎などの侵襲性合併症の予防、定期接種により98%減少

  • 接種回数:4回
  • 定期接種期間:生後2ヶ月~5歳の誕生日前
  • 標準接種時期:2か月、3か月、4か月、1歳~1歳半
    ※5種混合との交互接種は原則不可、在庫がなくなり次第可

4種混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)
(2024年4月より5種混合に変更)

<目的>ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ感染の予防

  • 推奨接種回数:4回
  • 定期接種期間:生後2ヶ月~7歳6か月の誕生日前
  • 標準接種時期:2か月、3か月、4か月、1歳〜2歳の誕生日前

3種混合ワクチン(DPT: ジフテリア・百日咳・破傷風)

<目的>ジフテリア・百日咳・破傷風の予防

  • 推奨接種回数:4回
  • 定期接種期間:生後2ヶ月~7歳6か月の誕生日前
  • 標準接種時期:2か月、3か月、4か月、1歳~1歳半

ポリオ(IPV)

<目的>ポリオウィルス感染による急性灰白髄炎・小児麻痺の予防

  • 推奨接種回数:4回
  • 定期接種期間:生後2ヶ月~7歳6か月の誕生日前
  • 標準接種時期:2か月、3か月、4か月、1歳~1歳半

2種混合ワクチン(DT:ジフテリア・破傷風)

<目的>ジフテリア・破傷風の予防、過去の定期接種の追加として

  • 定期接種期間:3ヶ月〜7歳6か月の誕生日前、11~13歳の誕生日前
  • 標準接種時期:11~12歳の誕生日前

BCGワクチン

<目的>結核菌感染および重症結核(結核性髄膜炎、粟粒結核)の予防

  • 推奨接種回数:1回
  • 定期接種期間:生直後〜1歳の誕生日前
  • 標準接種時期:5か月〜8か月未満

麻しん(はしか)・風しん混合ワクチン(MR)

<目的>麻疹、風疹感染・重症化の予防

  • 推奨接種回数:2回
  • 定期接種期間:①1歳~2歳の誕生日前、②5歳~7歳の誕生日前
  • 標準接種時期:①1歳、②小学校入学前1年(年長)

水痘(水ぼうそう)ワクチン

<目的>水痘感染、脳炎、膿痂疹などの重症化の予防

  • 推奨回数:2回
  • 定期接種期間:1歳〜3歳の誕生日前(3か月以上あけて)
  • 標準接種時期:①生後12~15か月、②生後18〜23か月(6~12ヶ月以上明けて)

日本脳炎ワクチン

<目的>日本脳炎ウィルス感染、中枢神経感染症など合併症・重症化の予防

  • 推奨回数:4回
  • 定期接種期間:①②③生後6か月〜7歳6か月の誕生日前、④9~13歳の誕生日前
  • 標準接種時期:①②3歳で2回(1か月あけて)、③4歳、④9歳

子宮頸がんワクチン(HPV)

<目的>ヒトパピローマウィルス)の感染とそれに伴う子宮頸がんの予防

  • 推奨回数:3回(15歳未満2回も可)
  • 定期接種期間:12〜16歳(小6〜高1相当)
    ※15歳未満の2回接種は最短5か月以上あける
  • 標準接種時期:中学1年生女子(6〜12か月あける)

任意接種

3種混合ワクチン(DPT: ジフテリア・百日せき・破傷風)

<目的>学童期以降のポリオ、急性灰白髄炎・小児麻痺の予防、定期接種後の追加接種として

  • 推接種可能年齢:2か月から
  • 推奨接種時期:5歳以上7歳未満、11歳以上12歳未満

ポリオ(IPV)

<目的>学童期以降のポリオ、急性灰白髄炎・小児麻痺の予防、定期接種後の追加接種として

  • 接種可能年齢:2か月から
  • 推奨接種時期:5歳以上7歳未満

おたふくかぜワクチン

<目的>おたふく(ムンプス、流行性耳下腺炎)、それに伴う合併症の予防

  • 推奨接種回数:2回
  • 接種可能年齢:1歳から
  • 推奨接種時期:①1~2歳の誕生日前、②5~7歳の誕生日前

A型肝炎ワクチン

<目的>A型肝炎ウィルス感染の予防

  • 推奨接種回数:3回
  • 接種可能年齢:1歳から
  • 1回目と2回目の間隔:2~4週間
  • 3回目は、2回目の約半年後

インフルエンザワクチン(不活化)

<目的>インフルエンザウィルス感染、重症化の予防

  • 推奨接種時期:毎年、流行前の10~1月
  • 対象年齢:生後6ヶ月以降の全年齢
  • 13歳未満は2回接種が必要(2週間以上開けて、推奨4週間程度)

インフルエンザワクチン(経鼻弱毒化)

<目的>インフルエンザウィルス感染、重症化の予防

  • 推奨接種時期:毎年、流行前の10~1月
  • 対象年齢:2歳以上50歳未満

子宮頸がんワクチン(HPV) 男子

<目的>ヒトパピローマウィルス)の感染とそれに伴う 中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなどの疾患の予防

  • 推奨接種回数:3回
  • 2ヵ月の間隔をおいて2回接種を行った後、1回目の接種から6ヵ月の間隔をおいて1回の接種を行います。
    1年以内に接種を終えることが望ましいとされています。
    2回目と3回目の接種がそれぞれ1回目の2ヵ月後と6ヵ月後にできない場合、2回目は1回目から1ヵ月以上、3回目は2回目から3か月以上あけます。(最短4か月)

※国内で使用されているHPVワクチンには2価、4価、9価の3種類がありますが、そのうち男性への接種が承認されているのは4価ワクチン(商品名:ガーダシル)のみです。
※お住まいの区市町村によっては補助金がありますので、役所や保健所でご確認ください。

予防接種料金表(自費)

2種混合DT 4,000円
破傷風
3種混合DPT 4,000円
4種混合DPT-IPV 10,000円
5種混合 20,000円
不活化ポリオ 9,000円
3種混合+ポリオ(就学前セット) 12,000円
A型肝炎エイムゲン 6,000円
B型肝炎 6,000円
肺炎球菌(20価) 10,000円
ヒブ 8,000円
BCG 9,000円
おたふく・ムンプス 6,000円
水痘 8,000円
MR 10,000円
風疹
麻疹
日本脳炎 6,000円
狂犬病ラビピュール 14,000円
髄膜炎菌メンクアットフィ 22,000円
シングリックス 22,000円
シルガード9 27,000円
ガーダシル 17,000円
ロタリックス 13,000円
ロタテック 9,000円

保護者の同伴について

お子様の予防接種でご来院される際には、母子手帳の持参と保護者の同伴が必要です。
保護者の同伴が難しい場合は、お子様の健康状態などを把握し、予防接種や予診票に関して理解されているご親族の方の同伴も可能です。保護者以外が同伴される場合は、同居のご親族であっても、予診票に加えて「予防接種委任状」をご持参ください。
※「予防接種委任状」がないと予防接種を受けられませんので、ご注意ください。