子どもの中耳炎について
中耳は鼓膜の奥にある部分で、中耳腔という空洞があり、耳管という細い管で鼻の奥とつながっています。中耳炎は、鼻やのどの炎症を起こしている細菌やウイルスが耳管を通じて中耳に入り、炎症を起こしている状態です。子どもの耳管は成長途中で、大人に比べると太くて短く、真っ直ぐなので鼻やのどの炎症が耳管を通って中耳に感染しやすく、風邪などの後に中耳炎を発症しやすい傾向があります。実際に7歳までの子どもの60~70%が中耳炎を発症するとされており、発症が特に多いのは生後半年から2歳までとなっています。
主な症状
主な症状は耳の痛みと発熱ですが、耳が詰まっているような感覚、聞こえにくさ、黄色い鼻水などの症状を起こすこともあります。悪化すると鼓膜が破れ、耳から膿が出る耳漏を生じることがあります。
ただし、症状を言葉で説明できない幼い子どもの場合は、耳に触れられるのを嫌がる、耳を気にしている、機嫌が悪くぐずっている、ミルクの量が少ないなどの症状を見逃さないようにしてください。また、風邪などが治った後も黄色い鼻水がでたり、寝起きに咳をしたりといった症状がある場合も注意が必要です。こうした症状や疑わしい様子がある場合には、早めにご相談ください。
中耳炎は子どもに多い疾患ですが、放置してしまうと聞こえが悪くなり言語の発達に影響を及ぼす可能性があります。さらに重症化してしまうと聴力の障害が残る、顔面神経麻痺を起こす、頭蓋内の脳膿瘍などを起こす可能性もあります。疑わしい場合にはすぐに受診し、中耳炎と診断されたらしっかり治るまで治療を受けることが重要です。
診断と治療
問診では、はじめて症状に気付いた時期、症状の経過、症状の内容などについて伺います。ひと通り全身を診察した上で、鼓膜を観察し、発赤・肥厚・膿や滲出液の貯留の有無を確かめます。
所見が軽度の場合には、鎮痛薬で痛みを緩和させ、補助的に気道粘液調整・粘膜正常化剤で鼻水が流れ出て溜まらないようにしながら、炎症が自然に鎮まるのを待ちます。中等症以上の炎症を起こしている場合や、軽度でも炎症が自然に改善しない場合には細菌感染が疑われますので抗生物質による治療を行い、数日後に状態を確認し、その後の治療方針を決定します。
繰り返す急性中耳炎の治療
子どもは中耳炎を繰り返しやすく、しっかり治療して根治させても、風邪を引くたびに中耳炎を起こすことがよくあります。その場合にもしっかり治るまで治療を続けることが重要です。なお、かなり稀ですが、生まれつき中耳に疾患があり中耳炎を繰り返すケースも存在しますので、疑われる場合には精密検査を受けて頂けるように、高度医療機関をご紹介いたします。
中耳炎に関するよくある質問
どんな症状があったら中耳炎を疑うべきですか?
耳の痛み、発熱、黄色い鼻水、鼻詰まりなどを起こすことが多いです。風邪が治りかけたタイミングで中耳炎を発症するケースが多いので、風邪を引いて下記の症状がある場合には早めにご相談ください。
- 平熱に戻らない
- 急に泣き出す・ぐずっている
- 耳を気にしている
- 耳に触れられるのを嫌がる
- ミルクを飲む量が減ったなど
中耳炎になったらプールはやめておいた方がいいですか?
急性中耳炎では、耳痛と発熱がある間は禁止です。耳痛と発熱が落ち着いても、黄色い鼻水(膿性鼻汁)が出ている間は再発しやすいため、控えるのが望ましいです。また、プールの水は、細菌の繁殖を抑えるために塩素系消毒剤が使われており、残留塩素濃度が一定の基準値以上に保たれていますので耳や鼻などへの刺激が強く、鼻水が増加すると再発のリスクになります。
滲出性中耳炎は、プールは可能です。鼓膜チューブ留置中については、ガイドライン上「潜水をしなければプール可能、耳漏や耳痛が反復する時は耳栓使用」とされており、耳栓・水泳帽を装着し、潜水や飛び込みを禁止、が良いでしょう。
中耳炎の治療中も入浴は可能ですか?
発熱や耳痛がある場合は、入浴によって炎症が悪化する可能性があるので入浴は控えましょう。平熱になり、耳痛も解消されたら普段通りに入浴して問題ありませんが、洗髪の際は耳にシャンプーが入らないように注意しましょう。
中耳炎は予防できますか?
中耳炎は鼻風邪から発症することが多く、風邪を予防することで中耳炎の発症リスクを下げることができます。鼻風邪をひいた際は、鼻汁が鼻の奥に溜まった状態にならないよう、鼻水をすすらずにかむ事、うまくかめないお子様は機械で鼻吸引をしてあげることが、予防のために大切です。原因菌のヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)や肺炎球菌は、予防接種によりある程度の予防が期待できます。