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小児泌尿器科疾患

小児泌尿器科について

子どもの泌尿器疾患や症状、尿路や性器の先天異常、排尿機能発達の問題などを診療します。お子様の泌尿器症状についてご不安なことがあればお気軽にご相談ください。

小児の排尿機能

1歳前後から5歳にかけて発達します。尿意は1歳前後から自覚しているといわれ、2歳頃までは反射排尿(脊髄反射により自動的に排尿筋の収縮が起こる)です。成長に従い、排尿が起こったことを保護者に知らせることができるようになります(排尿の告知)。2歳前後から3歳までの時期に尿いの自覚の表明を促すきっかけを保護者が行うと、次第に申告が可能になります(排尿の予告)。トイレに誘導する(トイレットトレーニング)ことで、そこでの排尿が習慣化し、オムツが外せるようになります。昼の覚醒時の排尿習慣の確立後、しばらくして夜間睡眠中の尿保持が可能になり、夜間のオムツも外せるようになります。

このような症状はありませんか?

  • 就寝中、何度もトイレで目が覚める
  • トイレが近い
  • 排尿してもスッキリしない
  • 残尿感がある
  • 尿を出しにくい
  • 尿が出ない
  • 漏れてしまう
  • 尿の勢いが弱い
  • 排尿時痛
  • 尿を出した後に痛みが起こる
  • 尿に血液が混じる
  • 尿道や会陰部の不快感
  • 尿検査で尿潜血・蛋白尿を指摘された
  • 膀胱炎が治らない、何度も再発する など

上記のような症状がみられる場合は当院までご相談ください。

代表的な子どもの泌尿器症状と疑われる疾患

膀胱炎

おまる尿の出口である尿道口から大腸菌などの細菌が入り込み、膀胱粘膜に感染して発症します。健康な場合は細菌が膀胱に侵入しても尿に洗い流されて感染を起こしませんが、体調不良、疲労やストレスなどで免疫力が低下していると感染を起こしやすいです。
排尿習慣の自立した女児に多く認められ、慢性便秘は発症リスクになります。

膀胱炎を疑う症状

  • 頻尿(トイレが近い・昼間の排尿回数が多い)
  • 排尿痛
  • 尿意があるのに尿が出にくい(切迫性尿失禁)
  • 1回の尿量が少なく、残尿感がある
  • 血尿
  • 発熱などの全身症状を認めない

膀胱炎の治療

膀胱炎は、上記症状と尿検査で診断します。
多量の飲水により排尿を促すとともに、抗菌薬の内服を開始します。軽症の場合は、抗菌薬を内服することなく飲水だけで軽快することもあります。排尿・排便習慣、生活習慣から再発しやすい傾向があり、繰り返す場合は日常的に飲水を積極的に行い、排尿を我慢しないように心がけましょう。また、すぐに受診できない場合も同様に、飲水を積極的に行い、排尿を我慢しないようにしてください。複数回繰り返す場合には、尿路(腎臓〜尿管〜膀胱〜尿道)の器質的な疾患が隠れている可能性があるので、超音波検査などのスクリーニングを行うことが大切です。膀胱炎を発生させる状態は、尿の停滞や膀胱内圧の高値を意味しますが、このことは腎臓へ細菌がアクセスしやすいとも言え、対処が遅れると急性腎盂腎炎を併発するリスクとなり、注意が必要です。

腎盂腎炎

尿路(腎臓〜尿管〜膀胱〜尿道)に細菌が入り、腎臓の腎盂まで達して感染し、炎症を起こしている状態で、高熱を伴います。腎盂腎炎の高熱は、風邪などと違い鼻水や鼻詰まり、咳、のどの赤みなどを伴うことはなく、持続的です。
言葉である程度症状を説明できる年齢では、排尿痛、下腹部の不快感、腹部・背中・腰の痛みなど、腎盂腎炎を疑う症状があるかどうかを確認できますが、乳幼児の場合は症状の確認が困難であるため、高熱以外の症状がなく、原因がわからない場合には尿検査を行って診断します。また、診断された場合は、重症度を知るために血液検査を行います。
腎盂腎炎と診断された場合、抗菌薬の点滴と(場合によっては内服)による治療、および大量補液が必要で、入院加療が必要になるケースが多いです。
小児の腎盂腎炎の1/3から1/2に基礎疾患が認められるので、超音波検査をはじめとする検査が必要です。下部尿路に異常がある場合には、膿尿(細菌を含んだ尿)が消失するまで尿道カテーテルの留置を行います。また、基礎疾患を有する尿路感染症の30〜50%を占める代表的な疾患として、膀胱尿管逆流症(膀胱と尿管の接合部の先天的な形成不全や、尿道弁や神経因性膀胱などの器質的・機能的下部尿路疾患による膀胱の高圧状態を原因とし、尿が膀胱から尿管〜腎臓側へ逆流する疾患)があり、この診断のために排尿時膀胱尿道造影(レントゲン透視下に排尿時の尿路を撮影する検査)を行うことがあります。
腎盂腎炎は腎臓に瘢痕(傷痕)を残すことがあり、腎機能の低下につながる危険性があります。腎機能は不可逆的である(一度失った機能は修復されない)ため、腎盂腎炎を発症した場合はしっかりと治療を行い、原因を検索し、繰り返さないように治療することが大切です。
原因がわからない高熱がある、子どもが体調不良を起こしている場合には腎盂腎炎をはじめとした尿路感染症の可能性を考慮し、早めにご相談ください。

夜尿症(夜間におしっこを漏らしてしまう)

(夜間)睡眠中に不随意に尿を漏らすもので、「5歳以降で、1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くもの」で、「1週間に4日以上を頻回、3日以下を非頻回」と定義されています(日本夜尿症学会:夜尿症診療ガイドライン2021)。

これまでに夜尿が消失したことがない、消失したが6か月未満の場合は「一次性夜尿」、6か月以上消失していた時期があった場合は「二次性夜尿」とされ、二次性夜尿はより多くの生活上のストレス(保護者の離婚、弟・妹の誕生など)を経験していたり、精神疾患の併存率が高く、それらの原因に対する対応・対策が求められます。

一般的な「一次性夜尿」については、成長と共に排尿をコントロールできるようになりますが、基礎疾患(腎尿路奇形、内分泌疾患、神経疾患、脊椎疾患、心因性など全体の5%程度に併存)がないかを配慮しながら、治療を行います。
(一次性)夜尿の三大要因は、

  1. 夜間多尿
    就眠中の抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone : ADH)の分泌低下により、夜間の尿量が多い
  2. 排尿筋過活動
    睡眠中に排尿筋の収縮が起こって膀胱内におしっこをためられない
  3. 覚醒閾値の上昇(覚醒障害)
    尿意があっても目覚めない
    とされ、補助的な要因として、
  4. 発達の遅れ
  5. 遺伝的素因
    両親のどちらかに夜尿の既往がある場合5〜7倍、両親ともに既往がある場合約11倍夜尿になりやすいという報告があります。また、一部の遺伝子の関与が推察されています。

治療は、

  1. 生活指導・行動療法
  2. 薬物療法(抗利尿ホルモン補充としてのデスモプレシン、漢方)
  3. アラーム療法

夜尿症でお悩みの場合は、お子様の自信を失わせることがないように配慮しながら、治療についてご相談させていただきます。

昼間頻尿(トイレが近い・日中の排尿間隔が短い)

頻尿の目安は、5歳を過ぎても1日のトイレ回数が8回以上、またトイレに行く間隔が2時間より短い場合です。1回の排尿量が少ない膀胱機能障害(二分脊椎による神経因性膀胱など)、尿路感染症、外陰部の炎症(亀頭包皮炎、腟前庭炎)おしっこの量が多い多尿、膀胱が過敏になる過緊張性膀胱(心理的緊張など)、尿道が狭くなる尿道狭窄、尿路奇形など、様々な原因疾患が疑われます。

尿失禁(おしっこが漏れる)

尿保持の異常を尿失禁と呼びます。原因は、下部尿路の先天奇形(膀胱流出路閉塞、括約筋形成不全、膀胱流出路の嚢胞性腫瘤など)、尿管異所開口(尿管腟開口など)などの器質的病変によるものと、機能的障害によるものがあります。機能的障害によるものは、トイレが近く我慢できずに漏れてしまう切迫性尿失禁(神経因性膀胱など)、腹圧がかかると漏れてしまう腹圧性尿失禁(排尿筋形成異常など)、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の両方の症状がある混合性尿失禁、神経的な問題によって生じる機能性尿失禁の4種類に分けられます。その他に、小児では小児昼間頻尿症候群(diurnal frequency syndrome in childhood、幼児期〜学童期に昼間だけ著しい頻尿を来たし3週から3か月で自然治癒
する)や、giggle incontinenc(軽い笑いに同調して排尿筋の不随意収縮と尿失禁が起こる疾患)などがあります。

血尿(おしっこに血液が混ざる)

見た目からわかる肉眼的血尿と検尿でわかる顕微鏡的血尿があります。いずれも、月経や激しい運動(マラソンなど)で出現することがあり、その場合は心配ありません。特に、血尿単独ではほとんどが無症候性血尿と言われ、病的意義のないことが多いです。
一方、尿沈渣で変形赤血球や赤血球円柱を認める場合は、急性糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)や慢性(糸球体)腎炎(血尿の約5%)などの腎臓疾患が疑われます。蛋白尿血尿両者陽性と変化するとより障害の強い慢性腎炎への進行が懸念されるので、定期的な検尿(初年度は3か月ごと、以降は年1〜2回)が大切です。
尿沈渣で均一赤血球の血尿の場合は、尿路結石やナットクラッカー現象などの泌尿器疾患や、まれにWilms(ウィルムス)腫瘍が見つかることがあります。
小児の検尿マニュアル(日本小児腎臓病学会)の紹介基準に従い、小児腎臓病診療または専門施設へご紹介します。

尿検査で尿蛋白を指摘された

3歳児検尿では「尿蛋白のみ±以上」、幼稚園検尿では「潜血1+以上、尿蛋白±以上」、學校検尿では「潜血、尿蛋白ともに1+以上」を異常としています。また、未就学児は尿濃縮能などの腎機能が未熟であることから、±を経過観察の対象とします。
尿蛋白のみでは2年目に75%以上が正常化することから、一過性(機能性)蛋白尿が多く含まれると推察されますが、0.9%に慢性腎炎やネフローゼ症候群、嚢胞性腎疾患があることから、慎重かつ継続的な観察が必要です(最初の3か月は1か月ごと、その後は2,3か月程度ごと)。小児の検尿マニュアル(日本小児腎臓病学会)の紹介基準に従い、小児腎臓病専門施設へご紹介します。

陰嚢に触れても精巣の存在を感じない

泣いたり笑ったり興奮している時は、挙睾筋反射により精巣が陰嚢基部(付け根)付近まで挙上している可能性があります。入浴時やリラックスした状態でも陰嚢内に精巣を触知できない場合は、移動精巣(精巣が陰嚢内〜鼠径部付近を上がったり下がったりしている)や停留精巣(ていりゅうせいそう:常に陰嚢基部や鼠径部〜腹腔内の高い位置に固定され、陰嚢底部まで引き下ろすことができない)などが疑われます。精巣が常に高温環境にあると造精機能不良をもたらし、将来の妊孕性に影響があることがわかっています。早期発見、早期治療のため、少しでも気になる時には、ご相談下さい。

陰嚢に痛みや腫れがある

急激に発症し、陰嚢の自発痛や圧痛、腫脹をきたすものを「急性陰嚢症」と呼びます。緊急手術が必要な精巣捻転症と、保存的観察ができる炎症性疾患とに大別されます。精巣付属器の精巣垂捻転症、精巣上体炎、陰嚢水腫(陰嚢内に液体がたまる)、陰嚢や鼠径管内の静脈が大きくなる精索静脈瘤(陰嚢や鼠径管内の静脈の怒張)、精巣腫瘍、鼠径ヘルニアの嵌頓(かんとん)などの可能性があります。精巣捻転症は、新生児と思春期にピークがあり、左側が右側の2倍の頻度で発症します。発症から6時間以内が手術のゴールデンタイムとされ、この期間内に治療を受けることで、精巣が壊死するのを防ぎ、機能を温存できる可能性が高くなります。

陰茎の痛みや腫れ

嵌頓包茎(包皮反転時に包皮輪(包皮末端部)が狭く、亀頭の下を締め付け、腫れや痛みが生じた状態)や亀頭包皮炎などが疑われます。
嵌頓包茎は、陰茎の血行障害や壊死に至る危険性があるため、早急に医療機関を受診する必要があります。
亀頭包皮炎は、疼痛のために排尿困難となることがあり、抗菌薬を内服・外用することがあり、繰り返し発症する場合は、処置または手術が考慮されます。目安として、「1〜2年の経過観察の過程で、亀頭表面ないし外尿道口がまったく見えない状態が継続する場合や学童期に同様の状態の小児」に対して、保護者及び本人と十分な相談のもとで実施します。

排尿痛

頻尿を伴う場合は尿道炎や膀胱炎などの尿路感染症、頻尿を伴わない場合は外陰部の炎症(男児:亀頭包皮炎、女児:腟前庭炎)などの可能性があります。思春期以上では性感染症の可能性も念頭に置きます。

風邪症状を伴わない頻回の発熱

膀胱尿管逆流、尿管瘤(にょうかんりゅう)、二分脊椎、神経因性膀胱などを原因とした尿路感染症(急性腎盂腎炎)、の可能性について、鑑別する必要があります。適切な治療により、腎機能低下を最小限にすることが大切です。

陰茎が曲がっている・陰茎の先端でない部分からおしっこが出ている

陰茎弯曲、尿道下裂(尿道の出口がペニスの裏側にある)などの可能性があります。外観所見から診断が可能で、小児泌尿器専門家へご紹介させていただきます。外科的治療が適応になります。

超音波検査で腎臓の腫れや水腎症を指摘された

尿路(腎臓〜尿管〜膀胱〜尿道)の腎盂尿管移行部(腎臓と尿管のつなぎ目)や尿管膀胱移行部(尿管と膀胱のつなぎ目)は、先天的または後天的に狭くなっていることがあり、水腎症(腎臓が腫れて見える)や水尿管症〜巨大尿管症を来たすことがあります。尿路感染症の繰り返しや排尿困難などの症状が無ければ、心配はいりませんが、これらがある場合は積極的に治療を検討するのが望ましいでしょう。また、症状が無い場合は、拡大傾向がないか、定期的な超音波検査でフォローしましょう。