お子様の発熱について
体温は、健康な状態でも1日24時間の中で1℃程度の変化があり、子どもの場合も同様です。健康な状態での体温を平熱と呼びますが、子どもは成人よりもやや高めのことが多いです。
小児では、脇の下の検温で37.5℃以上を「発熱」とします。また、平熱より1℃以上高い場合や、他の感染症状などの合併がある場合を、有意な発熱と考えます。
発熱の原因
発熱の原因は様々で、多くは感染に関連したものですが、それ以外に膠原病・自己免疫疾患、腫瘍、脱水症、放熱の障害(熱中症、先天性無汗症など)、炎症性腸疾患(Crohn病)、薬やワクチンの副作用・副反応があげられます。
年齢別では、新生児期は髄膜炎や敗血症、乳児期早期は尿路や呼吸器感染症、乳児期中期間は突発性発疹、乳幼児期は川崎病、発疹性疾患、呼吸器・消化器感染症、尿路感染症が多く見られます。学童期は自己免疫疾患・膠原病が見られるようになります。
特に発症頻度が高いのは感染症です。感染症を起こす細菌やウイルスなどの外敵が体内に入り込むと免疫系が防御反応を起こし、リンパ球の働きが活発になります。リンパ球は高温の環境にあると活性化するので、身体に備わっている調整機能が体温を上げることでリンパ球の活性化をサポートするとともに、高温環境下においてウィルスの増殖が抑制されます。感染症で生じる発熱は適切に制御されており、脳にダメージを与える41℃以上になることはありません。
膠原病・自己免疫疾患による発熱は、炎症反応が関与し、高熱になるケースもあります。
また、薬やワクチンの中には副作用で発熱を起こしやすいものがあります。
受診が必要な発熱
意識障害・痙攣・頭痛などの神経症状を認める場合、腹痛や呼吸障害(呼吸苦、喘鳴など)、循環障害(蒼白など)や重度の脱水傾向が疑われる場合、など速やかな受診が必要な場合があります。
下記のような症状や状態を伴う場合にはすぐに受診してください。また、下記に当てはまらない場合でも、保護者の方が不安を感じるようでしたら、お気軽にご相談ください。
- 苦しそうに呼吸している
- 大きく吸ったり吐いたりしている
- 何度も嘔吐を繰り返す
- 嘔吐と頭痛を伴う
- 痙攣を起こした
- 顔色が青白くなっている
- いつもとは違う激しい泣き方をしている
- 意識がぼんやりしている
- 自分で水分摂取できない
生後6カ月頃までは、赤ちゃんの体には母体からもらった抗体が存在し、基本的にはそれにより守られています。そのため、それ未満で高熱があったり、発熱が続くことは何かしらの深刻な原因が隠れている可能性があると考えます。特に、生後3カ月未満の赤ちゃんは髄膜炎や敗血症でないことを確認し、適切な治療を受けないと致死的になる危険性があります。38℃以上の熱があったらすぐに受診してください。また、38℃に至らずも37℃台後半が続きなんとなく元気がない、などの場合も、ご相談ください。
月齢・年齢を問わず、3日以上発熱が続いている場合も、受診しましょう。
発熱時の対処法
こまめに水分を補給して安静を保ち、経過を確認するだけでも大丈夫な場合がほとんどです。
また、体力の消耗が激しい、食事・水分補給・睡眠に支障があるなどの場合を除き、感染症による発熱では解熱剤で無理に体温を下げる必要はありません。
水分補給
子どもは成人に比べ体内の水分量が多く、体重に対して体表面積が広いので、発熱時に水分の放散量が多く、脱水症状を起こしやすい傾向があります。
発熱がある場合は、しっかりと水分摂取を行うことが重要です。授乳中には母乳や人工乳をこまめに与えてください。離乳食を始めている場合は、経口補水液、麦茶、白湯など刺激が少ない水分をこまめに飲ませることが有効ですが、量をたくさん飲めない時は経口補水液が最も効率的に体内へ吸収されますのでおすすめです。なお、必要十分な水分をとることが重要なので、お子様が喜んで口にする飲みものが他にあれば、それを与えても構いません。ぐずったり、嘔吐・下痢を繰り返したりなどで水分補給が不足する場合には脱水症状が現れる前に速やかに受診してください。脱水の程度の評価は、排尿の有無・頻度・性状がおおよその目安になります(脱水傾向では、排尿がないか少なく、頻度も少なく、とても濃い尿が出ます)。
母乳や人工乳
母乳や人工乳は、いつも通りに飲ませてください。発熱がある場合も人工乳は薄めずに与えることが推奨されています。なお、母乳だけでは水分不足が心配な場合には、経口補水液を追加で与えましょう。
温度調整と冷やし方
発熱しはじめた当初は寒気を感じることが多く、寒いと訴えたり、身体が震えたりする場合があります(悪寒)。こうした時は、保温性の高い布団や毛布などでくるみます。悪寒が落ち着いて震えが止まるか、顔色や手足の色が改善したら、外気温を下げて薄着にさせ、熱がこもらない薄めの布団などに替えます。
汗が出てくると熱も下がります。汗が出たら乾いたタオルで優しく拭い、乾いたパジャマに着替えさせてください。
微温湯での清拭や、首・脇の下・太ももの付け根を保冷剤で冷やすことが有効なクーリングになります。保冷剤で冷やす場合はハンカチなどに包んでから当てるようにすると、刺激が少なくて良いでしょう。大きめの薄いハンカチの中央に保冷剤を置いて巻いたものを2個用意し、左右脇の下にタスキ掛けにすると安定して冷却することができます。最近は、乳幼児向けに脇の下に保冷剤を当てるためのタスキ掛けの商品が販売されています。
貼るタイプの冷却シートは、体表のみに作用し、シートが体温で温められるとすぐに効果を失うので有効なクーリングとは言えませんが、安心や心地よさの目的で使用されるのは良いでしょう。
冷却クーリングについては、もしお子様が嫌がって安静・安眠を損ねる場合は、無理に行う必要はありません。
解熱剤
発熱しても、十分な水分補給ができ、しっかりと睡眠がとれている場合は、無理に熱を下げる必要はありません。
しかし、発熱のために水分補給ができない、食事がとれない、熟睡できない場合は、解熱剤を使って熱を下げることでできるようになることがあります。
また、発熱があると全身の代謝が亢進し、酸素消費量が増加するので、咳の症状がある場合や、息苦しそうな様子がある場合も解熱剤で熱を下げると、症状の改善が期待できます。
解熱剤の使用は必須ではありませんが、熱苦(発熱に伴う困難)のある時は上手に利用すると良いでしょう。
解熱剤を投与すると、30分程度で効果が現れはじめ、2〜4時間程度でピークとなり、6時間程度から効果が切れてきます。
小児の解熱薬はアセトアミノフェン(カロナール®️、市販薬小児用バファリン®️」が第一選択です。Reye症候群や低体温、脳症の報告などから、他のNSAIDsなどは原則使用しません。アセトアミノフェンアレルギーの方の場合は、イブプロフェンなどで代替されることがあります。
発熱時の食事
発熱していると食欲不振から食事量が減ってしまうことがありますが、基本的には水分補給ができていれば、無理に食事をさせる必要はありません。
赤ちゃんでは、水分として母乳やミルクを与えている場合なら心配ありませんが、糖分のない飲み物(麦茶、白湯、水など)だけで過ごしている場合には、低血糖を起こす危険性があり、注意が必要です。経口補水液による水分補給に加え、糖分を含んだものを与えるようにしてください。
アレルギー体質がある場合は、発熱や感染症で免疫機能が過敏になることで、これまでは大丈夫だった食品でもアレルギー反応を起こすことがあります。食材に注意し、食事後はしっかり様子を確認してください。
夜間や早朝、休日に発熱してしまったら
発熱時の対処法を参考に経過を観察し、水分補給が不足している、ぐったりして元気がないなど、受診が必要な症状や様子がある場合には、#8000(子ども専用救急電話相談)や#7119(救急電話相談)に問い合わせるか、電話連絡の上で救急医療機関を受診してください。
子どもの発熱に関するよくある質問
発熱したら解熱剤を飲ませた方がいいですか?
感染症では、免疫の働きを活性化する目的で発熱が起こっており、体温は安全な範囲に制御されています。治すために発熱している状態ですので、無闇に下げてしまうと回復を遅らせてしまう可能性があります。
ただし、水分補給ができていない、眠れないなどで体力が消耗している、咳や息苦しさがあるなどの場合には、脱水症状を避けて酸素消費量を抑えるために解熱剤で熱を下げる必要があります。
発熱したら、とにかく早く受診した方がいいですか?
発熱している・熱が高いことが全て、緊急性が高い状態ではありませんが、2日以上続いている、いつもと様子が違う、水分補給ができていないなどの場合には受診が必要です。また、各種検査を実施するにあたっては、発熱してから半日程度以上時間が経過してからでないと正確な判定が出ないので、飲水ができていて緊急性がなければその時間になるまで自宅待機頂いた方が良いでしょう。また、発熱が遷延し5日目も熱が下がらない場合や、自宅での経過観察にご不安がある時は、全身状態の再評価が必要ですので、再受診をお勧めします。
保護者の方がご不安に感じる場合は、どのタイミングであっても構いませんので、お気軽にご受診ください。いつもお子様を見られている保護者様の「何かおかしい」という感覚を大切に、診察させて頂きます。
解熱剤の効果は何分くらいで現れますか?
小児科で処方される解熱薬の第一選択は、アセトアミノフェンを主成分とする解熱剤です。副作用が比較的少なく、安全性の高い解熱剤であり、服用後30分で効果が現れはじめ、効果のピークは服用後3~4時間経過したタイミングです。ピークを過ぎると徐々に効果が落ちはじめますが、解熱効果は服用後4~6時間続くとされています。
消化しやすい食事は、具体的にどんなメニューですか?
柔らかくて温かいものは、消化器への負担が少なく、消化しやすいとされています。おかゆ、柔らかく煮込んだうどん、豆腐、ジャガイモ、半熟卵、白身魚の煮物、鶏のささみや胸肉、バナナやリンゴなどがあります。リンゴはすりおろすと食べやすくなります。