湿疹は、内的要因と外的要因の関与によって出現する病態です。
内的要因として、正常な皮膚は表面のバリア機能が外部からの刺激や異物の侵入から皮膚を守ってくれていますが、このバリア機能が何らかの原因で破綻すると湿疹を発症しやすい状態となります。
外的要因として、細菌、ウィルスやアレルギー物質による刺激を受けることにより、皮膚の免疫反応が起こり、これが過剰反応になることで炎症(かゆみやブツブツ)を発症します。
原因が判然としない場合に、急性湿疹と呼びますが、滲出性紅斑(赤くなる)、浮腫(腫れる)、ときに小水疱を伴い、発症後数日しか経過していないものとし、これに対して、おおむね1 週間以上経過し苔癬化を伴うものを慢性湿疹と呼びます。急性湿疹状態の組織は、明らかな海綿状態(組織がスポンジ状に変化している様子)と強い真皮の浮腫や炎症細胞の浸潤を伴い、慢性湿疹状態の組織は、苔癬化、表皮肥厚、不全角化が目立ち、炎症細胞の表皮内浸潤は少ない状態です。
湿疹の種類
湿疹の症状を起こす疾患には様々なものがありますが、受診される患者様が多いのは下記の疾患です。
- アトピー性皮膚炎
- 接触皮膚炎
- 脂漏性皮膚炎
- 皮脂欠乏性しっしん(乾燥性湿疹)
- 手湿疹(手荒れ)
- 貨幣状湿疹
- 痒疹 など
同じ場所にできる湿疹・繰り返す湿疹について
同じ場所に湿疹を繰り返す小児の代表的な疾患は、アトピー性皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎は、主にかゆみのある湿疹が生じ、悪化と改善を繰り返します。日本皮膚科学会は、以下のように定義しています。
- 掻痒 (かゆみ):強いかゆみがあること。
- 特徴的な皮疹と分布:
アトピー性皮膚炎に特徴的な湿疹 (紅斑、丘疹、鱗屑など) が見られること。
・左右対称に湿疹が現れる。
・年齢によって特徴的な皮疹の分布がある:
乳児期:頭、顔、体幹、四肢に広がる。
幼小児期:頸部、四肢屈曲部に皮疹が多い。
思春期・成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向。にお伝えしていますので、お悩みがありましたらお気軽にご相談ください。 - 慢性・反復性経過:
・症状が悪くなったり改善したりを繰り返す。
・乳児では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上を慢性とする。
湿疹の治療
外用薬
湿疹は、主に過剰な免疫反応による炎症を原因として生じます。抗炎症作用と免疫抑制作用のあるステロイド外用薬の塗布が最も有効な治療ですが、同時に、皮膚が十分な水分を保ちながらバリア機能を改善できるように保湿剤による正しいスキンケアを行うことが大切です。
外用薬は、塗るタイミングや量、塗り方によって得られる効果が異なります。また、保湿剤による正しいスキンケアは、症状改善に加え、再発予防のためにも不可欠です。
外用薬の効果的な使用法や保湿剤による正しいスキンケアについて、一緒に確認をさせて頂きます。
内服薬
湿疹は痒みを伴いますが、掻くことが新たな刺激となり湿疹を増悪させます。日中は我慢できても、夜になると無意識に掻いている、または日中も掻くのを我慢することで気持ちにゆとりがなくなるなどの場合には、抗ヒスタミン薬を内服して掻かないでいられるようにしましょう。
このような外用薬やスキンケア、抗ヒスタミンの内服でも効果が思わしくない場合や、できるだけこれらのお薬を使用したくないなどの場合などでは、漢方薬の服用で高い効果を期待できるケースがあります。漢方薬の基礎である東洋医学では、その方が本来持っている自然治癒力を高め、体質を改善することで治療や予防につなげます。
当院でも、ステロイド外用薬や保湿剤といった西洋医学的なアプローチに漢方薬による治療を併用し、より高い治療効果や予防効果を目指すことが可能です。
生活指導
皮膚のバリア機能を強化するためには、保湿だけでなく血行や代謝の改善、生活の工夫も必要です。
- 軽い有酸素運動を習慣的に行うことで血液やリンパ液の流れが改善すると代謝も上がります。早足の散歩、エクササイズやストレッチなどを取り入れることも有効です。
- 保湿剤の塗布は、入浴後1時間以内を目安に行いましょう。入浴後には角層から水分が蒸散しますが、保湿剤によりこれを防ぐことができます。入浴直後を推奨する傾向もありましたが、直後とそれ以降の塗布で明らかな有意差を認めなかったと報告されました。時間にこだわりすぎず、入浴後は外用するという習慣が大切です。
- 石鹸・洗浄剤の主成分は界面活性剤であり,過度の使用やすすぎ残しは皮膚の乾燥を悪化させる可能性が指摘されていますが、どの商品が優れているかといった明らかなエビデンスは認められていません。基剤が低刺激性・低アレルギー性、色素や香料などの添加物を少なくしている、刺激がなく使用感がよい、洗浄後に乾燥が強いものは避ける、など適切な洗浄剤を選択することが重要です。特に乾燥の強い部位への石鹸・洗浄剤の使用は最小限にとどめるのが望ましいです。
- ナイロンタオルやブラシによる物理的刺激は、角層からの水分蒸散を増加させ,皮膚の乾燥を助長するため使用せず、石鹸・洗浄剤をよく泡立てて泡を手のひらに取り優しく洗うようにしましょう。
- 冬期の暖房により室内の相対湿度が低下することから、加湿器等による対策も必要です。羊毛素材やごわごわした素材などの衣類の刺激や、髪の毛の先端部の接触などの軽微な刺激でもかゆみを生じるため、そのような刺激のない衣類を選択しましょう。
- 長期間の日光曝露によって角層からの水分蒸散量が増加するという報告もあるため、過度の太陽光への曝露は避け、紫外線の強い 5 月から 8 月、特に紫外線量の多い10時から14時頃の外出の際は帽子を着用し、なるべく日陰を歩くようにしましょう。また、紫外線への曝露が長くなるときにはサンスクリーンを使用しましょう。